福島原発から海洋に放出されたセシウムは20~30年で日本沿岸に戻る
過去の大気圏内核実験で放出されたセシウム。
しかし、海洋に流出した放射性セシウムは、2000年から2010年にかけても検出され続けています。
海洋に流れて、それで終わり、ではないということです…。
海洋に放出された放射性セシウムは3500兆ベクレル。30年かけて1750兆ベクレル、60年かけて875兆ベクレル…。
それはどれだけの影響をあたえるのでしょうか。
そして、おそらくある程度以下には『ならない』のでしょう。
この報告は、『そういうこと』を意味しているのです。
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大気圏内核実験以降も検出され続けるセシウム
核爆発で成層圏に上った後ジェット気流などに乗り、日本列島の太平洋側とアメリカ東海岸に最も多く降下し、中国が最後に大気圏内核実験を実施した1980年以降は、1986年の旧ソ連・チェルノブイリ原発事故を除き、新たに発生する原因はありません。
ところが、海水を採取したところ2000年から2010年にかけて、日本列島の近くでは、黒潮に沿った深さ約400メートルの海中で海水1立方メートル当たり2.0~2.5ベクレルのセシウム137が検出され続けました。
過去の核実験で日本列島の太平洋側に降下したセシウム137は海中に沈み、太平洋を東に移動します。途中で西に方向を変えた後、フィリピン沖で折り返し赤道に沿って東方向に進んでいるのですが、この折り返し地点で一部が黒潮に乗っていることが判明したのです。
福島原発のセシウム137は20~30年で太平洋を循環し日本沿岸に戻ってくる
気象研究所は、福島原発事故で大気中に放出された放射性セシウムは、3万~4万テラベクレル(テラは1兆)に上ると2月29日時点で試算。大気中に放出されたセシウムは10日間で地球一周し4月までに海に7~8割、陸に2~3割降下。これまでに福島原発事故で海に流出されたセシウム137は、黒潮に乗って東へ拡散した後、北太平洋を時計回りに循環し、20~30年かけて日本沿岸に戻ると気象研究所は予測しています。
海に直接出たセシウム137は、5月末までに3,500テラベクレル(テラは1兆)と試算し、ほかに大気中へ放出された後に海に落ちた量が1万2,000~1万5,000テラベクレル程度あるとみており、総量は1万5,500~1万8,500テラベクレルで、過去の核実験で北太平洋に残留している量の十数%に当たります。
気象研究所は、核実験後に検出された放射性物質のデータなどを基に、今回の事故で出たセシウム137の海洋での拡散状況を分析しました。福島県沖から北太平洋へ水深200メートル以下の比較的浅い部分で東へ流れ、日付変更線の東側から南西方向に水深400メートルで運ばれることになります。フィリピン付近から一部は黒潮に乗って北上し日本沿岸に戻ります。
フィリピン付近からはインドネシアを通過してインド洋、さらに40年後には大西洋に到達する流れのほか、赤道に沿って東に進み太平洋の東端で赤道を越えた後、赤道南側で西向きに流れるルートもあります。
海への流出量は、東京電力が作業用の穴の割れ目などから約1,000テラベクレルが出たと当初発表していましたが、海水で検出された濃度などから流出量を試算したところ、東電発表の3倍以上となっています。
福島原発事故で放出されたセシウム137の全体像を把握するには、太平洋全域での高精度の測定が必要になっているのです。
気象研究所の研究者らは東海村臨界事故のときに、当時放射線医学総合研究所にいた木村真三氏と共同で放射能汚染調査を実施しています。その木村真三氏は、NHKETV特集取材班著『ホットスポット ネットワークでつくる放射能汚染地図』(講談社)の中で次のように語っています。
「本来は住民のためにあるはずの汚染地図が、政府や行政の都合で見捨てられることがあってはならないのです」
「マクロの調査、ミクロの調査にはそれぞれ異なる意味があり、住民の対応が異なるのです。そしてそれを住民にきちんと提示することこそが、住民を放射能汚染から守ることになります。それが、国への信頼へとつながっていくのです」
「この国で起きていることは、国や行政だけが悪いのではなく、研究者が政府の言いなりになることを条件に論文として発表することで、自己の地位や名誉を研究業績という形で評価されるシステムに甘んじていることが問題なんです。研究者である前に人としてあるべき姿を見誤ってきたシステムを金科玉条とする習わしが招いた人災なんです。あまりにも愚かな行為です。多くの研究者がその過ちにすら気づいていないか、気づいていても、その呪縛を自己の意志で断ち切ることができないでいるのが問題なんです」
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福島原発から海洋に放出されたセシウムは20~30年で日本沿岸に戻る-放射能汚染は長期観測が不可欠
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