米国務省:福島から80km圏内は1年以上住むには適さない
先日朝日新聞社の報道で、アメリカ政府の退避勧告が、80kmから20km圏内に縮小された旨を紹介させて頂きました。
朝日新聞社では、言葉通り、事実だけを簡潔に伝える表現がなされています。
* * * *
【ワシントン時事】米国務省は7日、3月の東京電力福島第1原発事故を受け、米国人を対象に出していた退避・渡航延期勧告の範囲を、同原発の半径80キロ以内から半径20キロ以内に縮小すると発表した。
国務省の出した渡航警戒情報は、同原発の半径20キロ圏内と、日本政府が指定する計画的避難区域、特定避難勧奨地点に滞在する米国人に退避を呼び掛けている。
また、退避勧告を解除する半径20キロから80キロの地域に関しても、1年以上の長期滞在者に注意を呼び掛けるとともに、妊婦や子供、高齢者は30キロ圏内の居住を避けるよう勧告した。
* * * *
半径20キロ圏内に縮小=米政府の退避勧告―原発事故
http://www.asahi.com/international/jiji/JJT201110080005.html
一方、米国務省が自国民であるアメリカ人に対して発した『アラート』は、随分毛色が違っています。
カレイドスコープさんのサイトで、アラート全文の翻訳が記載されていたので、一部を転載しています。
American Citizen Services
http://japan.usembassy.gov/e/acs/tacs-alert20111008.html
* * * *
米国市民に対して勧告していたエリアは、いったん解除します。
日本政府が示している最近のデータに基づいて、米国民には福島第一原発の半径20km圏内には立ち入らないよう勧告します。
さらに、日本政府が計画的避難区域に指定した原発の北西エリアには、立ち入らないようにすべきです。
原発から北西方面の、この長方形のエリアには飯館村、川俣町の山木屋地区、葛尾村、浪江町、南相馬が入っています。
これら日本政府によって退避勧告が出されているすべての特定スポットに立ち入るべきではありません。
これらのエリア内にいる米国民は、すぐに退避すべきです。
日本政府の作成した避難エリアについての地図と情報は、このオンラインで見つけることができます。
福島第一原発の半径80km圏内の他のエリア
一時的に滞在する場合:
日本政府は、福島第一原発から80km以内の既述したエリア以外でも放射線量を計測しており、その値はさまざまです。
米政府は、米国民が、これらの地域に一時的にとどまる限りにおいては、健康や安全リスクは低いと考えており、1年以内の滞在であれば、顕著な危険はないものと考えています。
米政府としては、これらの地域に旅行するに際して、この地域の状況がどのようになっているのか日本の当局に相談した上、熟慮していただきたいと思います。
長期的な居住:
福島第一原発から80km圏内に1年以上居住する場合は、より高いリスクに晒されるものと考えられます。
さまざまな注意事項から、福島第一原発から80km圏内に1年以上、居住することを選んだ米国市民は、地元の自治体から、その地域における放射能レベルの最新ガイダンスを受け取り、放射線被曝を減じるための勧告を受けるべきであると考えています。
さらに、妊婦、子供、高齢者(米国では65歳以上を指す)は福島第一原発から30km圏内には、住んではなりません。
* * * *
米国務省は、確かに80km圏内から20km圏内に避難地域を縮小してはいますが、20km圏内及び、ホットスポットとなっている特定の地域を名指しで、立ち入ってはならないとして警告しています。
そればかりか、80km圏内においては、1年以内の一時的滞在なら、健康上の顕著なリスクは少ないとしながらも、1年以上の滞在については、はっきり放射線被曝のリスクに晒されるものとして言及しています。
さらに、放射線被曝の影響を考え、妊婦や子供、高齢者を30km圏内での生活は不可であると明言しているのです。
これに対して、日本政府や自治体の対応はどうだったでしょうか。
日本政府は、緊急避難地域として設定されていた場所の指定を解除し、人々を現地に返そうとしているのです。
アメリカの報道が、日本ではただ退避区域の緩和という意味合いでしか伝えられていませんが、それは如実に私たちが事実の『本当の意味』『真意』を知ることなく、本来伝えられるべき情報が伝えられていないことをあらわしています…。