ホールボディカウンター「不検出」が意味すること
先日の毎日新聞の報道に少し気になる内容がありました。
内部被ばく:「検出できず」6割 南相馬市立病院が調査
http://mainichi.jp/select/science/news/20120205k0000m040096000c.html
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福島県南相馬市立総合病院の坪倉正治医師らが行った高校生以上の市民の内部被ばく線量調査の結果、検出限界以下となった人が昨年9~12月の3カ月間で約1.6倍に増えていたことが分かった。また、大半が国の規制値の年間1ミリシーベルトを下回っていた。被ばく線量は時間の経過と共に低下する傾向がみられ、原発事故後の食事や空気、水などによる慢性的な内部被ばくがそれほど大きくない実態が浮かび上がった。
調査は昨年7月11日から、南相馬市民や、一部伊達市民など計約1万人を対象に、内部被ばくを測定する「ホールボディーカウンター」を使って原発事故で放出された放射性物質セシウム137の被ばく線量を測定。このうち、昨年9月26日~12月27日までに測定した高校生以上の南相馬市民4745人分の詳細な解析をまとめた。
その結果、内部被ばく線量が測定器の検出限界(1人あたり約250ベクレル=ベクレルは放射線を出す能力の強さ)を下回ったのは2802人(59.1%)。体重1キロあたり20ベクレル以上は169人(3.6%)、同50ベクレル以上は16人(0.34%)いた。
体内に取り込まれた放射性物質は徐々に排出され、大人では3~4カ月で半減する。事故時に一度に被ばくしたと仮定して試算すると、年間1ミリシーベルト以上になるのは1人だった。
残りの約5000人も、突出した数値を示す例はなく、ほぼ同じ傾向がみられるという。南相馬市の2日時点での空間線量は毎時0.1~2マイクロシーベルト。【河内敏康】
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ホールボディカウンターや尿検査などで、被曝線量が低い値になっている。なので、内部被曝の影響は少ない、健康に与える影響は少ない…。
本当にそうなのでしょうか。
下記に、尿検査による被曝量の検査を行った記事がありましたので、あわせて紹介します。
内部被曝を調べてみた!
http://www.yomidr.yomiuri.co.jp/page.jsp?id=53451&from=tb&from=popin
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東京電力福島第一原発の事故が起きてから、毎日のように「○○産の野菜から放射性セシウムが検出された」などというニュースが入ってくる。「子どもの尿から放射性セシウムが出た!」というショックな話も耳にする。身の回りにある食材は果たして安全なのか。実際、我々はどのくらい内部被曝(ひばく)の危険にさらされているのか。正確に把握するのは難しいが、まずは自分が内部被曝をしているのかどうか、尿で調べてみることにした。
2011年12月、民間の検査機関に検査を申し込んだ。調べてもらえるのは「ヨウ素-131」、「セシウム-134」、「セシウム-137」の3種類。12月15日、検査に必要な2リットルの尿を採取した。「2リットルも集めるのは大変だ」と思ったが、寒かったということもあってか、1日で集めることができた。
放射能は検出されるのか、されないのか。やきもきしながら結果を待った。約10日後、結果が送られてきた。
結果は……。
内部被曝を調べた検査結果
3種類とも「不検出」だった。正直、検出されると思っていたので、意外だった。
私には小さい子どもがいる。そのため、震災以降は少しでも安全と思われる西日本から野菜などを購入し、調理には不純物を取り除いた水を利用している。洗濯物は外に干していない。
とは言え、私は外食をする機会が多い。それぞれの飲食店がどこの産地の食材を使っているかはわからない。放射性物質を多く含む食材を口にしている可能性もあるのだ。また、取材で福島県に何度も足を運んでいる。比較的、放射線量が高い地域も訪れており、呼吸の際に空気中の放射性物質を取り込んでいることだって考えられる。
親が細心の注意を払っているという都内の子どもからも放射性セシウムが検出されている。だから、自分は検出されて当然だと考えていた。
放射性物質の検査は、使われる装置などによって検出できる限界値が変わってくる。私が受けた検査の限界値は、ヨウ素-131が0.15ベクレル、セシウム-134が0.19ベクレル、セシウム-137が0.17ベクレル(いずれも1キロ当たり)。検査機関によると、検査は「ゲルマニウム半導体検出器」という精度の高い装置で行われている。
放射能の知識がない私が考えても、検出下限値はかなり低いと言えそうだ。これで不検出ということは、まず内部被曝はしていないと考えてもいいのか。それとも、尿から排出されていないだけで、体内にたまっているということなのか。
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実際、都内に住む私たちがホールボディカウンターや尿検査を受けたとしても、不検出になる例は多いと考えられます。
しかし、仮にそうであったとして、本当に安全だといえるのでしょうか。
「不検出」が意味すること
http://www.yomidr.yomiuri.co.jp/page.jsp?id=53831
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自分が内部被曝をしているかどうかを調べるため、2011年12月、尿を採取して検査機関に検査を依頼したところ、放射性物質は検出されなかった。この結果は内部被曝をしていないことを意味するのか。NPO法人市民科学研究室代表の上田昌文さんに話を聞いてみることにした。上田さんは、研究室内に「低線量被曝研究会」をつくり、放射線被曝による影響について研究している。
1月中旬、東京・千駄木にある研究室を訪ねると、上田さんは「尿検査では、正確に内部被曝の量を測れない」といきなり、切り出した。
上田さんによると、体内にたまった放射性物質がどれだけ尿に出てくるかは、尿の採取条件などによって変わってくる。例えば、水分を多く取ったら尿に出てくる放射性物質の濃度は薄まる。また、代謝の速度は人によって異なるため、尿の採取にどのくらいの日数をかけたかなどによっても検査数値は変動するというのだ。
今回、検査に必要だった尿の量は2リットル。採取した日が寒かったせいか、私は頻繁にトイレに行き、1日で集めることができた。ただ、ふだんより多めに水分を取った気がする。だから、薄まってしまったのかもしれない。別の機会に数日かけて尿を採取し、再び検査をすれば、検出される可能性もあるわけだ。
ただ、上田さんは私の結果報告書に書かれた「検出下限値」に目をやり、「これで不検出なら、内部被曝をしているとしても、ごく微量で、健康への影響はあっても極めて少ないと言える」と指摘した。検出下限値とは、測定ができる限界値のこと。今回、計測した放射性物質の「ヨウ素-131」、「セシウム-134」、「セシウム-137」の検出下限値はそれぞれ、0.15ベクレル、0.19ベクレル、0.17ベクレル(いずれも1キログラムあたり)だった。仮に内部被曝をしているとしても、この数値よりは低いということだ。
尿検査で調べられるのは、検査時の体内の状況だ。検査数値は、これまで食事や呼吸によって体内に取り込んだ積算量ではない。
放射性物質には、放射線を出す能力が半分になる「半減期」がある。ヨウ素131は8日、セシウム134と137はそれぞれ約2年と約30年だ。ただ、体内に入っても、これらの物質は少しずつ排泄されるため、体内にたまった放射性物質の量は、ヨウ素131が8日、セシウム134と137は100日ほどで半分になるとされている。毎日、ヨウ素やセシウムを摂取し続けていれば話は別だが、例えば3月に摂取していても、それ以降は摂取していなければ、12月に測った尿検査に、その影響は反映されないということになる。
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尿検査においても、ホールボディカウンターにおいても共通していることは、生物学的半減期を過ぎて減衰していった放射能を測ることができない、という点にあります。
3月時点で致命的な被曝をしたとします。例えばヨウ素により、致命的な被曝を受けたとしても、半減期の8日間が10回ほど過ぎれば、検出できるヨウ素は1/1000以下になります。
セシウムにおいても、震災から300日が過ぎた時、少なくとも検出できるセシウムは1/8程度ということになります。
ホールボディカウンターにしても尿検査にしても、検査によってわかるのは計測時点でのセシウムの量だけである、ということをよくよく念頭に置く必要があります。
その放射性物質の摂取、内部被曝がいつ発生したものかがわからないため、『積算で』で、どれくらいの被曝をしていたかは把握することはできないのです。
反面、事故が発生し、最も放射性物質が放出されていた時期に受けた検査結果による数値については、かなり参考になる数値となるでしょう。
ホールボディカウンターの数値については、バズビー教授がこんなコメントを残しています。
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ホールボディカウンター(WBC)はほとんど役に立ちません。
WBCが検知できるのはセシウムだけですが、セシウムは本質的な問題ではありません。
お金はもっと食品や大気中の放射能の測定に使われるべきです。
大気中や食品に放射能があれば、それは人体に入ってくるからです。
人体の放射能は空気中よりもはるかに測定が困難です。
検体を機械に入れれば、食物の放射線量は分かりますが、人の体を切り取って機械に入れることは不可能です。
食品ならウランでもプルトニウムでもなんでも測定ができます。
しかし、これらの危険な物質は、人体内ではどれも測定できません。
WBCには更に重大な問題があります。
WBCを受けた後、本当は問題があるのに、自分は被曝していないと誤解することです。
セシウムが検出されても基準以下だったとか、飛行機に乗ったのと同じ程度などと言われ、WBCの結果だけで安心してしまうことが問題です。
だからWBCは時間の無駄なのでやめるべきだと思います。
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生物学的半減期が十分に過ぎた今になって、政府などがホールボディカウンターの検査を積極的に推進していくのは、非常に違和感があります。
バズビー教授の言葉の通り、ホールボディカウンターの結果を見せて、『思っていた結果と違って、全然被曝していなかったんだ』という錯覚をさせるための検査なのではないか、そのように仕向けるための検査に思えてなりません。
ホールボディカウンターでの検査では、ガンマ線のみの検査であり、危険なアルファ線やベータ線の放射線を検出することはできません。そして危険な核種の測定は、まるで最初から存在しないかのように計測されていないか、あるいは計測が公開されていません。
ホールボディカウンターの「不検出」という言葉。それは、決して「安全」や「安心」を意味するものではないということを覚えておかなくてはなりません。
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