汚染水海洋廃棄の今後
東電、低レベルの放射線汚染水を海に放出へ 法定濃度の100倍
福島第1原子力発電所の1~6号機のタービン建屋などに強い放射性物質(放射能)を含む汚染水がたまっている問題で、東京電力は4日、比較的、汚染レベルの低い水がたまっている集中廃棄物処理施設内と5、6号機の地下水を、それぞれ5日から海に放出すると発表した。東京電力によると、海へ放出する低レベルの放射性廃液は法律で定める濃度の約100倍。
2号機のタービン建屋地下の高濃度の放射能汚染水が何らかの経路で2号機取水口付近のピット(穴)から海に漏れ続けている。汚染水を移す仮設タンクの設置が間に合わない中で、一時的な保管先を確保するため、やむなく低レベルの汚染水を海に放出することにした。
海への放出は、原子炉等規制法64条1項に基づく措置。東電が放射性物質を含む水を意図的に海に放出するのは事故後初めてとなる。海に放出するのは、集中廃棄物処理施設内の滞留水が約1万トン、5、6号機の地下水が合計1500トン。
東電によれば、集中廃棄物処理施設内にたまった水の放射性物質の濃度は、ヨウ素131で1立方センチメートル当たり6.3ベクレル、5号機で16ベクレル、6号機で20ベクレルと、1~4号機などの数値に比べて低いとしている。
1~4号機のタービン建屋のうち、2号機には放射性物質の濃度の強い大量の地下水がたまっており、この汚染水を保管するには集中廃棄物処理施設への移送が欠かせないと判断している。このため、集中廃棄物物処理施設などの濃度の低い汚染水を排出する必要があり、やむなく海への放出を決めた。
この汚染水の海洋放出に伴う海への汚染影響は、近隣の魚介類や海藻などを毎日、摂取すると、年間約0.6ミリシーベルト被曝(ひばく)する計算となる。これは自然界などから受ける年間線量(2.4ミリシーベルト)の4分の1に当たる。
世界中の大気汚染に続き、海洋汚染も顕在化してきました。海洋は、海流によって全世界で繋がっているため、地球全体に影響を与えます。福島沖からの汚染はハワイを経由し、太平洋からインド洋へ、大西洋へと向かっていきます。時間こそかかりますが、汚染水は全世界に循環していきます。これは、メキシコ湾石油流出事故に並ぶ地球規模の海洋汚染となります。
問題はもう一つあります。それは生物濃縮です。汚染した水はプランクトンに取り込まれ、プランクトンは魚に取り込まれ、魚はより大きな魚に取り込まれ…こうして食物連鎖の過程で、数10倍、数100倍の放射性物質が濃縮されます。太平洋沖で採取できる海産物への影響は計り知れないダメージとなるでしょう。
さらに悪いことに、このまま汚染水の流出が続いた場合、太平洋沖の港にタンカーが寄港できなくなるかもしれません。タンカーは、海面に対して重心を安定させるため、出港時に海水を取り込みます。この海水が放射性物質で汚染されている可能性がある場合、タンカーは寄港することができなくなります。この状況が続けば、海洋の流通についても大きな影響をあたえることは必至です。
今回の事態は数ヶ月にわたって続くと想定されています。汚染水の排水も継続して続いた場合、それぞれが深刻な問題となるに違いありません。