ニューヨーク・タイムズが公開している放射線の汚染とその影響範囲について
先日アメリカが原発から50マイル、80キロ圏内からの立ち入りを禁止した根拠となる資料がニューヨーク・タイムズ紙に公開されていました。
The Evacuation Zones Around the Fukushima Daiichi Nuclear Plant (UPDATED March 17, 2011)
被曝による考えうる影響について、同誌は次のようにまとめています。
1.6キロメートル以内:1500Rem=15Sv 数週間以内に致死量となる
2.4キロメートル以内: 670Rem=6.7Sv 2ヶ月以内に死亡の可能性
3.2キロメートル以内: 390Rem=3.9Sv 2ヶ月以内に死亡の可能性
4.8キロメートル以内: 180Rem=1.8Sv 口やのどからの喀血の可能性
8.0キロメートル以内: 75Rem=0.75Sv 吐き気、目眩、頭髪が抜ける可能性
10キロ〜80キロ以内: 血液の化学物質の異常(白血病)の可能性
以上の情報を、放射線医学協会の資料と比較します。
二つの資料を照らし合わせる限り、おそらくNYT誌の記事は、年間単位での総放射線量で間違いありません。
30キロメートル地点まではすべて避難が完了していると仮定し、30〜80キロメートル圏内を考えます。
80キロメートル地点の年間 10Remは0.1Sv、すなわち100mSvであり、10μSv/hを超えています。
一方で日本の報道では、高くて1μSv/hとなっています。
なぜ、アメリカと日本政府の発表にこれだけの差異があるのか?おそらくそれは、放射線と放射性物質の両方をカウントしているか、放射線だけをカウントしているかの差異です。
なぜそう考えられるかというと、放射線は距離の二乗に反比例して減衰していきますが、飛散した放射性物質はその場で放射線を放ち続けるからです。そのため、48キロ地点、64キロ地点、80キロ地点、どれも放射線濃度に差異がありません。これは原発からの放射線以外の放射線、すなわち放射性物質が拡散していることを意味しているからです。
定点モニタリングや個人が所有するガイガーカウンタでは、放射線の量は検出できても、放射性物質が放ち続ける放射線をカウントすることができません。先日アメリカが独自に調査を行い、即日に80キロメートルの退避指示を出したのは、おそらくこの数字を根拠としています。
不思議に思ったことはありませんか?15日、北風によって関東一円に放射線の高い値が検出されたはずなのに、その放射線がどこにいってしまったのか。
恐らくは関東を超えて日本全体に拡散している可能性すらあります。
専門家も口を揃えて問題ない、と発言していますが、それはあくまで政府が発表する放射線量の測定方法が正しいものであった場合です。そこにとどまり続ける放射性物質や、水や食物からの内部被曝をカウントした場合、既に影響範囲は関東・東北の範囲を大きく超えてしまっている可能性すらあります。
今回の考察はあくまで私個人の憶測に過ぎません。ですが、この考え方が正しいものであった場合、100マイル、200マイルの距離でも放射性物質による汚染が進んでいます。
現状判明しているのは、17日時点でのアメリカが公開している情報、少なくとも80キロメートル以内で10μSv超、という情報だけです。ですが、それ以上の距離でも恐らくは距離によって減衰しない、放射性物質による汚染の拡大が進んでいるはずです。
この憶測が誤りであればいいと思いますが、念のため、外出時には極力花粉症用のマスクと、できればゴーグルを着用するといいかと思います。放射線は防御することはほぼできませんが、放射性物質であれば皮膚に直接触れたり、体に取り込まなければ身を守ることができます。
少なくともそういった装備がはっきり不要であると判断できるまで、用心に用心を重ねておきましょう。