洋上風力発電を考える
2月20日のニュースに、日本の風力発電の新設が低迷していることが取り上げられていました。
去年1年間、日本で新たに建設された風力発電の容量は、17万キロワットで、世界全体のわずか0.4%。
トップの中国は100倍以上の1800万キロワットで大きく成長しています。
福島第一原発事故の影響を受けて、世界的に再生可能エネルギーへの機運が高まる中、日本では風力発電事業者からの固定価格買い取り制度の詳細が決まっていないのが低迷の背景にある、というものです。
日本の風力発電新設が低迷 世界の0・4%
http://www.chunichi.co.jp/s/article/2012022001001144.html
一方、英国などでは2020年までに32ギガワット(英国全体の1/3)もの発電量を賄う計画が進んでいます。2011年3月14日、震災直後のニュースで報じられています。
その計画に参画している唯一の日本企業として三菱重工が取り上げられていました。
日本には、洋上風力発電を興すための技術と、そして世界第6位の広さの領海があります。
残念ながら前年の結果は冒頭に述べたとおりでしたが、2011年には銚子沖に、2013年には五島列島に洋上風力発電設備の建設が予定されているようです。
また、9月には復興支援の目玉として、福島沖に洋上風力発電所を設置する計画が報じられました。
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計画によると、早ければ13年度から6基の洋上風力の建設に着手する。実証試験には洋上風力を研究してきた東大のほか、部品メーカーや風力発電事業者10社以上が参加する。1基当たりの発電出力は2000~5000キロワットで、総出力は最大3万キロワット。5年間かけてデータ収集や海底ケーブルを使った送電、既存電力網との連携などを実証。20年には約30万キロワットに増やす考えで、実現すれば60~120基の大型風車が福島県の洋上に浮かぶことになる。
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地熱発電もそうでしたが、日本の再生エネルギーは、「泥棒来たりて縄をなう」の典型のようです。
政策としての風力発電は、社民党が大きく取り上げていました。キーワードとして大きく「脱原発」の言葉もあります。
大規模洋上風力発電では、1ユニットで原子力発電1基分の発電量に相当する100万キロワット級の発電を可能であるとしています。
日本で洋上風力発電が進まなかった背景には、次の4つについて、欧米と比較し下記の条件が悪かったことがあるといいます。
(1)比較的遠浅の立地条件に恵まれていること
(2)海底地盤も堅牢(けんろう)であること
(3)地震が少ないこと
(4)偏西風などの風況条件が良いこと
さらに、洋上風力発電を難しくしている要素として、次の3つがあるようです。
(5)初期コストが採算分岐点といわれる1キロワット当たり25万円を上回る40万円以上もかかる
(6)耐用年数が30年以下と短く、費用対効果が低い。
(7)沿岸漁業への悪影響がある。
そんな悪条件を克服すべく、九州大学の研究開発により、次世代の洋上風力発電が研究されています。
風力を集中し、電力供給を安定させる風レンズ風車の開発や、沿岸漁業との両立、さらなるコスト低下と耐用年数の増加が見込まれています。
洋上風力発電では、原子力発電のように放射能漏れの事故を起こすことがなく、持続可能なエネルギー供給体であることがなにより重要だと言えます。
一方、アメリカでも洋上風力発電への取り組みは行われていますが、欧州ほど大規模にすすめることはできていません。
その一因として、さまざまな反対運動があるといいます。豊かな地主層は、このプロジェクトが景観を壊すとして反対、地元の漁民は、漁に悪影響があるとして反対。また、ネイティブ・アメリカンの部族も、宗教的な儀式に悪影響があるとして反対しています。
こういった声にこたえ、計画の規模は当初より縮小されつつも、それでも最大出力450メガワット以上の規模を維持するといいます。
また、積極的に洋上風力発電への取り組みが行われているヨーロッパにおいても、洋上風力発電は必ずしも順風満帆とはいえないようです。
オランダでは、洋上風力発電の稼働から5年経った今でもコスト高に喘ぎ、投資家は別の選択肢を模索している状況です。
日本において急務とされる脱原発ですが、エネルギー政策として代替となるエネルギー供給は何をもって行うか明確に示しておく必要があります。まずその代替となっているのは火力発電ですが、火力発電にはLNG(液体天然ガス)などの安定した供給が必須となっています。
しかし、天然ガス、LNGともに輸送面での問題があります。特に、LNGは液体の性質上、タンカーなどでの輸送が必須となりますが、どこからどのように安定的に、かつ安全に輸送を行うかは最大の課題です。
現実的に脱原発を行うためには、一つの発電資源に頼ったエネルギー政策をとることはできません。
火力を始めとし、水力、風力、潮力、地熱、太陽光と、立地条件にあわせあらゆる分野での発電を可能にしなければなりません。
そのうちの1つとして、洋上風力発電に対する今回の研究が実現していくことを期待しています。