仏Rue89:福島からの報告、そこでは沈黙と嘘が住民を殺す
フランスのインターネット新聞Rue89にて、元フランス環境大臣コリンヌ・ルパージュ氏の記事が邦訳されておりましたので紹介します。
9/2:De retour de Fukushima, où le silence et les mensonges tuent
2011年9月2日 仏インターネット新聞「Rue89」
※以下、日本語訳は山崎康彦氏によるものです。
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『福島からの報告、そこでは沈黙と嘘が住民を殺す』
すでに数週間前から、福島原発事故の危機はすでに現実的な問題ではなくなっています。
大多数のフランス国民は、問題はすでに解決されており、東電と汚染水処理を担当するアレバ社は完全に事態を掌握していると思っています。
避難すべき住民はすでに避難しており、放射能の測定値は低下し,フランスから見ると日本は原発を間もなく再開するように見えます。
フランスの原子力ロビーから情報提供されたフランスのマスコミは、この原子炉、あの原子炉が間もなく再開されるだろうと報道しています。しかしそれらは悲劇的な嘘なのです。
数百万平米の水が汚染されている
まず第一に、私は環境大臣、環境副大臣、福島県副知事にお会いしましたが、彼らは「危機は去っていない。何も解決していない」と言っていました。
正確な情報は非常にまれなのです。
日本の行政当局は「3つの原子炉の炉心が溶融し圧力容器を貫通したこと」を認めています。
しかもいまどのような状態なのか分からないのです。
特にもっとも肝心な点である格納容器が溶融した核燃料で穴が開いたかどうかさえも分からないのです。
もしも格納容器に穴が開いていたとしたら、必然的に地下水は放射能に汚染されたことになります。
グリンピースは汚染水の処理に関して、処理はたった今始まったばかりと言っています。
日本の行政当局は誰も話したがらない放射能に汚染された汚泥が増え続けていることと
数百万トンの汚染水が貯まっていることを認めています。
放射能測定器が空港で止められている
二つ目に心配なことは、福島地方に居住している家族が文字通り悲劇的な状況です。
私は断固とした決意をもって闘っている女性達が率いる数百家族が集まっている市民団体と2時間話をしました。
彼女たちの言う事は十分理解できます。
彼女たちに起きたことはかつて私たちがチェルノブイリ原発事故の際に遭遇した事と同じなのです。
大地震と大津波が襲ってきた時全てが混乱していました。
日本の気象庁は福島原発事故が起きた時の風向きを表示する地図を提供できませんでした。
住民は風がどの方向から吹いて来るのかがわからなかったのです。
住民には何の避難指示も出されずヨードド剤も配給されなかったのです。
汚染度に関する情報が公表されるまでに一か月待たねばならなかったのです。
40000個の放射線測定器が政治的な決定で東京国際空港にいまだ留め置かれたままになっているのです。
家族達は毎日生活している自分たちの地域の放射線量がどの程度か知らないのです。
子供を心配する母親たち
食品検査に関して事前検査は行われていますが、検査結果は食品が流通した後に知らされているのです。
母親にとって一番の問題は子供たちの状況です。
国際原子量委員会(AIEA)加盟の日本を含めたすべての国は年間の許容放射線量を1ミリシーベルトと決めています。
原発労働者の年間許容放射線量は20ミリシーベルトです。
福島県内の原発近くに居住する人の年間の放射線量は5ミリシーベルトを大きく超え、所によると20ミリシーベルトになるのです。
彼女たちは子供たちのためと自分自身のために、1ミリシーベルトの環境で住める権利を要求しています。
問題は誰も彼女たちの質問に積極的に応じられる答がないことです。
より広い地区からの避難を考えるべき
考えられる二つの解決法は除染と良く議論されている避難です。
50cmから60cmの深さで土を掘って除染する訓練が行われています。
そのことで汚染レベルを下げることができます。
除染は狭い地域で実施すればそれなりの効果が出ると思われますが、福島県全体を除染することはできません。
そして考えるべきは二つ目の解決方法です。
希望する人々を出発させることです。
離れていく人がほかの地域でも生活できるようにすることです。
実際のところ日本の行政当局は、悲劇的なことですが、行政のやり方でしか行っていません。
住民には十分な情報が届かず本当の状況を知る手段は拒否されているのです、
農民は損害賠償されず
変化と技術的観点から、農業も例外とはならず行政当局の不作為によって犠牲にされています。
福島県は福島産の農産物の販売プロモーションを実施していますが風評被害に悩まされています。
私はかごに入った素晴らしい桃をお土産にもらいました。
この地区の農産物の大半は消費すべきでないことはもちろんです。
し生産者は生活のため損害を補償されるべきなのです。
しかし補償はされていません。
日本が直面しているこの悲劇的な状況は、全ての工業国に対して同じ危険と同じ悲劇が生じることを示しています。
沈黙が日本を支配している理由は正確に言えばこのためなのです。
医師たちが独自のネットワークを立ち上げた
医者は語る権利がなく敢えて語る事をやめています。
小児科医のネットワークが現地にでき、農村部で医者達が住民の健康を守ろうと努力し、医学的フォローが始まっています。
しかしこれらの全ては市民によって行政とは別建てで組織されているのです。
原子力当局は福島原発事故による疫学的な影響に関する詳細で正確な結果は得られないだろうと決めています。
私たちが闘わねならないのはこの沈黙の壁なのです。
なぜならば、福島の子供たちはフランスの原発が立地するフェッセンハイムやブジェやブレイエの子供たちと同じ運命だからです。
大きな困難と現場で戦っている市民団体について、語り行動し支援することは私たちの責任なのです。
日本は脱原発になるだろう
政府当局は限界を感じたらしく真の決定すなわち脱原発を決定したように見えます。
57ある原発のうち現在14しか稼働していないのです。
日本で今回大きな節電が可能となったのは様々な働きかけがあったからです。
たとえば、昼間各官庁では照明を消し(数日前京都で38度の猛暑の時でも)冷房を切っていたのです。
東京では大規模な広告の照明が切られました。
交替制で稼働する工業生産システムを様々に編成し直して驚くべき節電を達成したのです。
我々ヨーロッパ国民が2020年までに電力を20%削減するとしたら、日本の友人たちから多くを学ぶ必要があります。
新しく首相となった野田首相は民主党代表選の際、日本は今後新しい原発は建設しない、すなわち原発から脱却することを認めました。
それはいつでしょうか?
再稼働するのか否かは2012年春までに点検のために停止する原発に課せられるストレステストの結果次第です。
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Via:「福島からの報告、そこでは沈黙と嘘が住民を殺す」 元フランス環境大臣コリンヌ・ルパージュ