Das leise Sterben 静かな死[翻訳・転載]
Canard Plus Tomoさんのサイトにて、3月19日原発事故当時のドイツ語の記事が邦訳されていました。
この原文は3月に書かれています。しかし、私たち—-私も含めて—-目を逸らしている現実、そして辿るであろう未来を示しています。
Das leise Sterben 静かな死
http://vogelgarten.blogspot.com/2011/10/das-leise-sterben.html
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ドルテ・ズィーデントプフさんは20年来チェルノブイリ近郊の汚染地域を訪れ、現地とドイツとで、放射能の被害者達の救援活動を行っています。ズィーデントプフさんは核戦争防止国際医師会議 IPPNWのメンバーでもあります。n-tvとのインタビューでは白ロシアの村の人々の悲しみに満ちた生活とその静かな死について、そして原発事故の起こった福島を待ち受けている将来について語ってくださいました。
n-tv:20年間チェルノブイリの放射能犠牲者をご覧になっていらっしゃる経験から、日本人を待ち受けている将来についてどのようにお考えになりますか?
急性放射線障害に脅かされている原発作業員達の運命については誰しも想像がつくでしょうけれども、低線量被曝に晒される何千人、何万人もの人間にも着目しなければなりません。事故のおぞましい映像や、遅かれ早かれ死に見舞われ、あるいは病に倒れるだろう作業員達の運命にも関わらず、私達はあまりにあっさりと、低量被曝を受けた人々の間に長い年月に渡って広がっていくことになる病気を忘れてしまいます。
n-tv:福島原発周辺地域の放射能汚染に関する具体的な報告はありますか?
残念ながら信頼できる情報はほとんどありません。セシウムが環境に放出されたとらしいというのが私が最近耳にした情報です。そこでセシウムを例にとって説明しましょう。セシウムは生物学的にカリウムと似ており、人間の体は良性のカリウムとセシウムとを区別出来ません。セシウムは呼吸と食物を通して人体に侵入します。セシウムの身体への侵入を防ぐことは出来ません。人間の体に入ったセシウムは独立して細胞に取り付き、細胞のエネルギー源を破壊します。肝臓であろうと膵臓または脳細胞であろうと問題ではありません。セシウムに取り付かれた細胞は、隣接する細胞を同様の状態にした後、死亡します。こうやって不気味な悪循環が始まるのです。生命は細胞から誕生しますが、この場合、細胞は死の出発点となるのです。
n-tv:細胞に取り付いたセシウムの潜伏期間はどれくらいですか?
それはセシウムを取り込んだ人の年齢によります。子供は細胞分裂を絶え間なく行っていますから、より大きな危険にさらされています。成長期にある子供は常にエネルギーを必要とし、常に傷ついた細胞と共存していかなければならないのです。すでに臓器の成長が終わり、細胞分裂の総数が少ない成人は、即座には脅かされません。そう言う訳で、子供の方がずっと早い時期に悪性の疾患に見舞われます。チェルノブイリの経験から早ければ1年後から4年後とわかっています。成人の潜伏期間は20年から25年です。
n-tv:つまりチェルノブイリ事故から25年を経た今、当時いわゆる低線量被曝を受けた人間が発病しているということなのですか?
その通りです。当時の大人は25年間生き延び、今病気になっています。私達はそれを”静かな死”と呼んでいます。当時の子供達はもうとっくに発病しています。そして多くが死んでしまいました。
n-tv:人間の生殖活動にはどのような影響があるのでしょうか?
セシウムは遺伝細胞にも存在します。厄介なのはセシウムが女性の卵巣や卵細胞にも取り付くことです。これらは再生しない細胞なので、生涯傷つくことになります。男性の精子は再生しますが、生殖活動の中で、傷ついた情報が伝達されていきます。そうなるとまったく子供が生まれなくなるか、または生まれても、父親と母親から傷ついた情報を受け継いでいるのです。その結果はとても想像できません。日本の責任者達はとっくに女性や子供を南に移住させていなければなりません。何故彼らがそれを実行しないのか、私には皆目理解が出来ません。将来大量の白血病が出現するでしょう。今回のセシウム雲は日本人にとって大変な惨劇です。しかもその他の放射性核種についてはまだ何もわかっていないのです。
n-tv:ヨウ素とストロンチウムも話題に上っています。
ヨウ素というのは放射性ヨウ素のことで、子供の甲状腺に様々な影響を与えます。子供達は成長途上にありますから、甲状腺は大人よりも多くの放射性ヨウ素を取り込んでしまいます。チェルノブイリの経験から、子供達の甲状腺癌が飛躍的に増加することが予測されます。残念ながら日本の方々は覚悟をしていなければなりません。
n-tv:ストロンチウムは?
ストロンチウムもセシウムに似て、厄介極まりない核種です。人間の体はストロンチウムも区別することが出来ず、食物に含まれていれば吸収してしまいます。ストロンチウムは骨と歯に取り付いて放射を続け、血液(つまり赤血球や白血球、血小板と言った基本細胞)を製造する器官のある骨髄を攻撃します。これらの血液細胞はストロンチウムによって傷つけられます。それも生涯に渡ってです。というのはストロンチウムは一度取り付いた場所を離れることは決してなく、そこで短いベータ線を放射し続けるからです。
n-tv:事故を起こした原子炉の周辺地域がどれくらいの時間で再び清浄になったと言うことが出来るデータは存在しますか?
半減期というのは放射線の半分が消滅する期間を指すだけです。生物環境から放射性核種が完全に消滅する時期を想像するには、それぞれの半減期に10を掛けなければなりません。ストロンチウムとセシウムの場合はだいたい400年ということになります。つまり想像しうるあらゆる生物環境いたるところに低量の放射線が存在すると言うことです。もちろん地下水にも。
n-tv:汚染地域で生きること言うことを、どのように想像したらいいのでしょうか?
生きるですって? 何よりも人々は死んで行くのです。静かに死んでいきます。主に癌が原因ですが、あらゆる病気で人々は死んでいきます。ストロンチウムも大きく起因しています。例えばエネルギー交換が不可能となって心筋がやられます。ベラルーシーで行った診察は、子供達が2歳、3歳、4歳にして急性心不全で死んで行くことを証明しています。癌だけではないのです。腎臓不全、肝不全や多くは血液製造障害が原因で人々は死んでいきます。これらは「チェルノブイリ・エイズ」という名称で知られ、生き延びられるチャンスはほとんどありません。
n-tv:事故との共存が社会的に受け入れられることが最終的にあるのでしょうか?
外見上はあります。私はかれこれ20年に渡って定期的にチェルノブイリの周辺地域を訪れていますが、今でも現地の人々は事故のこと、自分達の将来のことについて語るのを嫌います。彼らは身を小さくして、死と共に生きています。死人を出さない家族はありません。若い人々、うんと若い人々が本来は老人にしかありえない病に侵されています。チェルノブイリでは、家を出た途端倒れて死ぬ若者がいます。急性の心不全です。20歳,25歳,30歳での心不全は決して珍しくありません。
n-tv: プルトニウムについてまだ話をしていません。もしも大爆発が起こったら環境に放出される可能性がありますね。
万一原子炉のひとつでも本当に爆発することになったら、私には想像したくもない惨事になるでしょう。プルトニウムはこの世で一番恐ろしい毒物です。福島の原子炉の燃料の半分はプルトニウムを含んでいるという話です。ほんの少量でもプルトニウムが体内に侵入すると肺癌に発展します。これに対して人間の体はまったく無防備です。そしてこれは不治です。何十万という人々が命を落とすことになるかもしれません。
(Peter Poprawa によるインタビュー)
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