国民は、国又は地方公共団体が実施する事故由来放射性物質による環境の汚染への対処に関する施策に協力するよう努めなければならない。
8月30日付で通過した法案、『平成二十三年三月十一日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の事故により放出された放射性物質による環境の汚染への対処に関する特別措置法』にて、こんな内容があります。
(国民の責務)
第六条 国民は、国又は地方公共団体が実施する事故由来放射性物質による環境の汚染への対処に関する施策に協力するよう努めなければならない。
投票総数 236 賛成票 230 反対票 6
賛成反対議員リスト
http://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/vote/177/177-0826-v006.htm
法案内容
http://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/gian/177/pdf/t051770291770.pdf
一見『赤紙』による召集を想起させるような内容ですが、『~するよう努めなければならない』というのは、努力義務規定に該当します。
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努力義務(どりょくぎむ)とは、日本の法制上「〜するよう努めなければならない」などと規定され、違反しても罰則その他の法的制裁を受けない作為義務・不作為義務のことである。遵守されるか否かは当事者の任意の協力にのみ左右され、またその達成度も当事者の判断に委ねられる。
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努力義務<wikipedia>
これに対し、裁判員法などでは、義務と罰則が課せられているため、性質的には大きく異なります。
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(出頭義務)
第五十二条 裁判員及び補充裁判員は、裁判員の関与する判断をするための審理をすべき公判期日並びに公判準備において裁判所がする証人その他の者の尋問及び検証の日時及び場所に出頭しなければならない。
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裁判員の参加する刑事裁判に関する法律
放射性物質による環境の汚染への対処は、国民の義務であり、これに協力しなければならない。
その言葉は、どこか戦時中の日本を思わせるような響きがあります。
つまりは、戦争に協力しなければ『非国民』である、というものです。
今の段階では、あくまで努力義務の規定ではあります。
ですが、今の政府やマスコミは除染を礼賛し、重汚染地域に対してもボランティアを募って除染活動をさせる風潮があります。
除染活動がただのボランティア活動ではなく、制度化、義務化するための布石のようにも思えます。
そうなったとき、本当に放射性物質による環境の汚染への対処は、国民の義務であるのでしょうか?
汚染地で暮らすことを余儀なくされ、あるいは生活の場を追われ、除染のための高額な税を納め、さらに除染活動にも従事して生命そのものを差し出すのが国民の義務だというのでしょうか?
本当にその責を負わなければならないのは、誰だったでしょうか…。