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中性子線の人体への影響について

2011-10-21 | 震災・原発 | By: sorakuma


JCO臨界事故を受けて、中性子とその被曝について、京都大学原子炉実験所の今中哲二氏がその特徴をまとめています。

中性子線の人体への影響について
http://www.rri.kyoto-u.ac.jp/NSRG/kouen/im000317.PDF

中性子被曝の特徴

人体の大部分は水であるため、中性子の人体への影響は、水に含まれる水素との衝突が重要となる。中性子によりはじき跳ばされた水素の原子核(陽子)は、周辺の分子をイオン化したりして細胞の構成分子を破壊する。
ガンマ線やベータ線に比べ、中性子被曝にともなうイオン化は、その軌跡にそって密に生じる(高LET 放射線)。そのため、同じ被曝量(吸収線量D:グレイ)であっても、中性子被曝の場合は影響が大きくなる(表1)。
現在導入が検討されているICRP60 勧告によると、被曝量(等価線量H:シーベルト)は:H=wR × D wR:放射線加重係数(中性子ではエネルギーにより5~20)

表1 中性子はガンマ線に比べどれだけ大きな影響をもたらすか(ICRP60 より)


腫瘍誘発ガンマ線の約3~約200 倍
(腫瘍誘発にともなう)寿命短縮ガンマ線の15~45 倍
形質転換ガンマ線の35~70 倍
染色体異常などガンマ線の40~50 倍
哺乳動物の遺伝学的影響ガンマ線の10~45 倍


その他、中性子の特徴について、以下のようにまとめられています。

中性子の特徴

核分裂によって発生した中性子は非常に大きなエネルギー(平均200 万電子ボルト:2MeV)をもち、非常に高速である(光の速度の10 分の1程度)。
電荷をもたないので透過力が強く、電子とは相互作用せずに原子核と衝突し散乱される。
鉄や鉛を通過してもなかなか減衰しない(質量数1の中性子が、質量数の大きな原子核にぶつかっても、跳ね返ったときの速度は落ちない)。
中性子を遮蔽するためには、水やポリエチレンのように水素をたくさん含む物質が有効である。
何回も衝突を繰り返すうちに、中性子の速度が落ちてエネルギーが下がる。周囲の温度と平衡状態となった中性子は熱中性子(平均速度毎秒2000m)と呼ばれ、原子核に吸収されやすくなる。
中性子を吸収した原子核は多くの場合、放射能をもつようになる。

ナトリウム(23Na)では、23Na(陽子11、中性子12)+n → 24Na(陽子11、中性子13:半減期15 時間でベータ崩壊)

放射能と核分裂

原子核に含まれる陽子と中性子の数のバランスが悪いと、その原子核は不安定となり、アルファ線やベータ線といった放射線を出して原子核が変化する(放射線を出す能力やその物質のことを放射能とよぶ)。
たとえば、コバルト60(60Co)の原子核には陽子27 個と中性子33 個があるが、中性子が多すぎるため、

(中性子)→(陽子)+(電子)

というベータ崩壊反応で、電子を原子核外に放出し(ベータ線)、陽子28 個、中性子32 個の安定なニッケル60(60Ni)に変化する。原子核が落ち着く際の余分なエネルギーは同時に、ガンマ線として放出される。

ラジウム226(陽子88、中性子138)の場合は、アルファ線(陽子2個+中性子2個のヘリウム原子核)とガンマ線を放出し、ラドン222(陽子86、中性子136)となる。

ウラン235(陽子92、中性子143)が中性子を吸収すると、原子核はほぼ2つに分裂して2個の核分裂生成物ができ、2個か3個の中性子が放出される。たとえば、核分裂生成物の片割れがストロンチウム90(陽子38、中性子52)の場合、相手方の方はキセノンであり:

235U + n(中性子)ストロンチウム 90 + キセノン 144 +2個のn
235U + n(中性子)ストロンチウム 90 + キセノン 143 +3個のn

といった核分裂反応が起きる。

過去、JCO臨界事故においては、事故を起こした研究所から2キロ離れた地点からも中性子が検出されたそうです。

今中氏は、距離における中性子の線量を次のように計算しています。
今中の計算による中性子線量:
100mで 81 ミリシーベルト
450mで 1ミリシーベルト
700mで 0.1 ミリシーベルト
1000mで 0.01 ミリシーベルト
1300mで 0.001 ミリシーベルト

なお、当時の科学技術庁や事故調査委員会は、周辺住民の被曝については350m以内にいた人々しか考慮に入れていません。


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